ダークエンジェル~最終戦争~
(第三章 死を待つときより)
良しにつけ悪しきにつけ、ある種の性質が生まれつき人に備わるものかどうかは、議論が分かれるところだ。マックスは、ジョシュアにはつねにやさしい心を持っていると言いつづけてきた。しかし、マックス自身が抱く希望は、その身内に燃える怒りに比べるとほんのわずかだった。ジョシュアの希望は赤々と輝き、その上に降りかかった厳しい現実も、その炎を消す事は出来なかった。
絶望の中で希望を持つ事は、ジョシュアには正しいことかもしれない。だが、マックスにとって希望は、絶望を連れてくるものに過ぎなかった。
(第四章 誘拐より)
そうしてようやく、すべてを別の視点から見る事が出来るようになった。ローガンにとっては、言わないでいるほうが簡単だっただろう--ただ、口を閉ざしていればいいだけなのだから。ローガンが言わなければ、アックスには一生わからなかったにちがいない…。
「ねぇ、うんざりすることってない?」マックスは、オリジナル・シンディに言った。
「なにに?」
「いつも正しいことに」
オリジナル・シンディはにやっと笑って、カップからたっぷりとコーヒーを飲んだ。
「まぁ、たしかに疲れるときもあるね…さぁ、これからどうするの?」
(第九章 新ボス登場)
自分が人類のことを心配しているのが不思議だった。マックスと、その仲間のジェネテックにたいていの一般人から向けられるのは嫌悪感と恐怖だけなのに。もし、マックスがほんとうに救世主だとしても、たしかに、生まれは処女懐胎とはいえるが、一般人が罪のために死ぬのを歓迎する気にはなれなかった。