阿美の本棚

阿美の好きな書籍の言葉や、最近好きな「鬼滅の刃」に関するレビューや考察(ネタバレしています)を書いています。

夜半歌聲~逢いたくて、逢えなくて

「ユンエン、僕らは時代に翻弄されている。僕らが信じているのは人道主義、追い求めているものは博愛、民主、自由なんだ!僕らが心のままに恋愛をして結婚をする、これは天地の道理にかなっていることなんだ。ふざけて言っているのではない、僕は真面目だ。真面目に結婚を申し込んでいる。返事をしてくれ」


「目を覚まして下さい!僕を身代わりにしても、あなたの愛はユンエンには伝わらない。彼女を騙し、自分も騙しているだけなんだ。その上僕とランディエの気持ちまでぶち壊したんだ!」
「神よ!私はどうすれば…いっそ死んだ方がいいのか!」タンピンは天を仰ぎ、悲嘆にくれた。
「あなたは自分勝手だ。身を隠して、最愛の人に会おうとしない。困難に直面したら、死んで逃れようとする。いくじなしだ!」
― 中略 -
「ソン先生、あなたとユンエンは心から愛し合っていたんでしょう。僕は、真実の愛情とは心の通い合いだと思うんです。外見なんか大事なことじゃない。もう何年も、ユンエンはあなたを捜し求めてきた。あなたの顔が彼女のために傷つけられたと知ったら、きっと、もっとあなたを愛するようになります」



タンピンあなたの顔は変わり果ててしまった。でもわたしの心の中で、あなたはあなたなの。私は今でもあなたを愛しています。
その顔のために私から隠れているのなら、私の気持ちが変わるのを恐れているのなら、タンピンあなたはユンエンという人間をわかっていない。
私たちの愛は、心と心が通い合ったからこそ。真に二人の気持ちが結びつき合ったからこそ。外見なんか大事なことじゃないの。タンピン、顔があんなになって、あなた自身も変わり果ててしまったなんて言わないでちょうだい。ユンエンだって気持ちはいちばん最初の気持ちのまま。かたい愛情はいつまでも固いの。一生寄り添って、死ぬまであなたと一緒にいるの。
タンピン、タンピン。十年も私から隠れ続けるなんて、あなたもずいぶんとユンエンの気持ちを、ユンエンの性格を知らないのね。
あなたが私にその顔を見られたくないのなら、それなら、ユンエンは二つの目を持っている必要があるのかしら?」



はっきり見えること、それが何だというの。目に映る世の中がどんな様子だというの?タンピンがいなければ、タンピンの愛がないのなら、すべてのことは何の意味があるの。



タンピンは病室のついたての陰からその様子を見た。涙があふれて止まらなかった。胸が張り裂ける思いで、彼はつぶやいた。「こうなるとわかっていたら、最初から隠れたりしなかった、最初から…。ユンエン、ユンエン、なぜそんな、なぜそんなことを…?」
― 中略 -
「ユンエン。なぜこんなことを…」
「タンピン。ユンエンのすべてはあなたのもの。あなたが私に顔を見られたくないなら、ユンエンの両目は、もう何も必要はないの」
「ユンエン。君が私のために払った犠牲はあまりに大きすぎる!」
「タンピン。あなたこそ私のためにいっぱいいっぱい辛い思いをしたわ」



「ユンエン。僕が気にしているんだよ。僕らも普通の人と同じように、色んな素敵なことを楽しみたい。僕は人目を引きたくないんだ。まして人を怖がらせたくないんだよ」
「いいわ、タンピン。言うとおりにするわ」