阿美の本棚

阿美の好きな書籍の言葉や、最近好きな「鬼滅の刃」に関するレビューや考察(ネタバレしています)を書いています。

青べか物語

(青べか馴らしより)

わたしの心の中にあたたかな愛情がわきあがった。そんなにもぶざまな格好の、愚かしげなべか舟はほかにはない。そのために嘲笑され、憎まれているのだが、それはそんなふうに造った者が悪いので、彼女自身には責任のないことである。彼女はなんの罪もないのに造った者の誤り、または臍曲がり(へそまがり)の代償を払わされているのだ。しかも彼女はその冤(むじつ)を訴えることもできず、黙って住民たちに嘲笑され、悪童どもの投げつける石に耐えなければならないのである。「ひとつ考えてみよう」私は彼女の修理された舳先を撫でながら云った、「問題は(青べか)という概念だ」


わたしが彼女に対する憐れみや、愛情や?りをかなぐり捨て、悪童どもと同じように、それが正しく青べかにすぎないと認めたとき、初めて彼女は私に身を任せた。つまり私と棹と櫂の命ずるままになった、ということを記しておけばいいであろう。