阿美の本棚

阿美の好きな書籍の言葉や、最近好きな「鬼滅の刃」に関するレビューや考察(ネタバレしています)を書いています。

ダークエンジェル~スキン・ゲーム~

(第二章 ターミナル・シティより)

「いい。わたしには、あなたたちを引きとめることは出来ない。でも、私はこれまで逃げ、隠れ、怯え続けてきた」さらに向きを変えて、言いつのった。「こんなふうに生きるのはもういやなの。みんなだって、隠れて生きるのはうんざりなんじゃないの?」何人かがうなずき、合意のつぶやきが聞こえた。
「日の光の下を歩きたくない?自分の家を持ちたくはない?安心して道を歩ける場所が?」




「わたしたちが、化け物ですって?けっこうだわ。今…わたしは、化け物であることを誇りに思っている。そして、今日、自分の立場をはっきりさせるわ。今、ここで」マックスはあたりを見回し、一人一人を見ていった。たくさんの顔、中には知ってる顔もあれば、知らない顔もあったが、心の内ではみな家族なのだ。


(第三章 篭城は一見にしかずより)

「みんな、自分にわからないものが恐いんだ。彼らの考えを変えるんだよ。理解させるんだ」マックスはそのひたむきな真剣さを見て、ジョシュアの言う通りだとわかった。だが、同時に、ジョシュアも、みんなもあれほど傷ついたのにもかかわらず、ジョシュアがとことんまで懲りていないことも知っていた。


(第七章 学校潜入より)

「好き嫌いを問わず、わたしたちはこの国にいる…その国は、疲れた貧しい群集、社会からはじき出されたみじめな人々の味方のようなふりをしている…。アメリカという国の、お気に入りの歌よ。明らかに、私たちには縁がない言葉だわ。でも、たしかにそういう言葉…自由という言葉…はあって、その上にこの国は成り立っているのよ」人々は顔をしかめて考え込み、追放者たちの中で感情と理性がせめぎあった。
「あなたたちは、あの外の世界の一部になりたくない。なぜなら、嫌われているからよ…彼らはわたしたちを恐れ、本当のわたしたちを知ろうとせずに殺したがっている…」
―― 中略 ――
「そう、彼らにわたしたちの事を知らせる唯一の方法は、彼らにそのチャンスを与えることよ」ふたたび、群集は静まった。「そして、彼らがわたしたちを恐れないようにする唯一の方法は、わたしたちを理解させることよ。わたしたちが希望や、夢や、家族を持っている人間だってことを」


(第八章 忠誠の誓いより)
 
しょせん、ジェネティック。
その言葉に、ゴットリーブは身震いした。人種差別主義者のビデオを見たことがあるが、その中で、自分の愚かさと怒りを覆い隠すための手段として、彼らが繰り返し使っていた言葉がそれだった。『やつらはしょせんニグロだ』、『しょせん、ユダヤ人だ』、『しょせん、メキシコ人だ』と。そして、今、同じ言葉が自分の頭の中にも浮かんでいた。『やつらは、しょせん、ジェネティックだ』と。ゴットリーブは湾を見つめ、これまでの人生を考えた。まず最初になぜ、政府の仕事を選んだか、何をしたくて心を決めたのか。自分の声が聞こえた。『すべては、自由と正義のために』そして、成人してはじめて、ゴットリーブはその言葉の真の意味を知った。